平尾・杉山研究室

研究概要

平尾・杉山研究室では、プロセスシステム工学とライフサイクル工学の研究を行っています。石油化学製品から複合素材、医薬品までの様々な製品を対象に、ライフサイクル全体を考慮しながら、より持続可能なプロセスやシステムを設計するための方法論やツール、望まれる技術や政策の提案に挑戦しています。

研究の動機と目的

化学製品・医薬品を持続可能なかたちで消費、生産していくためには様々な課題があります。製造する側では、医薬品やファインケミカルをはじめとする高付加価値製品や、リサイクル原料も利用できるような環境配慮技術の重要性が増しています。消費者の側でも、安全を担保し、環境に配慮した行動を支援するための仕組みが求められています。持続可能社会の実現に向け「命に関わる薬を、品質と生産性を両立させながら製造するための方法は何か」「環境や安全に配慮した製品を設計、製造、消費していくための方策は何か」といった問題に答えを出しておく必要があります。

私たちは、持続可能社会の実現に向けたプロセスシステム工学とライフサイクル工学の研究をしています。プロセスシステム工学は、モデリング・シミュレーションを駆使して、化学製品の製造に関わるプロセスやシステムを設計・運用するための工学であり、1980年代から化学工学の一分野として確立されてきました。これを、資源採取から廃棄に至るまでの製品の一生における環境影響を評価し、環境配慮設計を行うための工学として発展させたのがライフサイクル工学です。両分野の知識・手法を応用し、製品・プロセスから消費者を含む社会システムまでも視野に入れつつ、持続的な消費と生産に貢献することが私たちの研究の大きな目的です。

研究テーマとアプローチ

現在のところ、以下の二つのテーマを設けています。

医薬品製造プロセスの多目的設計のための製薬プロセスシステム工学(Pharmaceutical Process Systems Engineering: PSE):「人の命に関わる」「高付加価値」「少量多品種」という特長を持つ医薬品を、優れたプロセスで製造していくための方法論構築に取り組んでいます。

化学製品の持続可能な消費と生産(Sustainable Consumption and Production: SCP)に関わるライフサイクル工学:ステークホルダー間の連携を強化し、環境に配慮した製品ライフサイクルを設計するための方法論を構築しています。

研究の成果は、より持続可能なプロセスやシステムを設計するための方法論や、その実施例としてのケーススタディが主なものになります。実社会への応用も重視しています。研究の結果が、企業の実プロセスの性能向上につながった、リサイクルに関する政策決定に反映された、などの応用例が多数あります。国際的な関係も大切にしています。スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)やボルドー大学とは教員・学生の行き来を含めた盛んな研究交流をしています。海外製薬企業との国際共同研究にも取り組んでおり、インターンシップによる学生の長期派遣も実施しました。

私たちの研究の醍醐味は、課題を自ら見つけ、知識・ツールを目的志向で組み合わせ、解決していく過程にあります。例えば「医薬品製造における技術選択が、経済性や品質にどのような影響を与えるのか」を明らかにするためには、技術と経済性、品質の関係性を定式化する必要があります。「容器包装のデザインによって、消費者行動や製品ライフサイクルの環境影響はどう変わってくるのか」を知りたいのであれば、化学はもちろん、環境学や統計学、社会、経済などの様々な知識も求められるでしょう。様々な学問知識を組み合わせながら、それぞれの知識を単独で用いるだけでは解決できないような課題に、「橋」をかけて乗り越えられるようにしていきます。

実際の作業としては、コンピュータを用いたモデル構築とシミュレーションが中心になります。ヒアリング調査や実プラントから取得したデータをもとに、分析したい現象やシナリオが含まれた数理モデルを作っていきます。必要に応じて実験も行います。品質や環境、安全性のような評価項目をどう定式化するか、得られた結果を意思決定につなげるためにどう視覚化するか、も考えどころです。また、実際のプラントや社会に影響を与える前に、様々な、時には大胆なシナリオを試すことができるのも、モデルやシミュレーションをベースにした研究の面白さです。

関連する講義

私たちの研究室が主体的に関わっている講義は以下の通りです。
・ プロセスシステム工学II(3年Aセメスター)
・ プロセス設計及び演習(4年Sセメスター)
・ 社会技術としての化学技術(大学院Sセメスター)
・ プロセスシステムディベロップメント(大学院S2ターム)
・ 製薬プロセスシステム工学特論(大学院A2ターム・平成28年度開講)
化学システム工学科3年生でプロセスシステム工学IIが面白いと感じた人は、卒論研究の配属先としてぜひ検討してみてください。

関連する学会

研究成果は主に以下の学会で発表しています。

化学工学会:年会(3月)および秋季大会(9月)

日本LCA学会:研究発表会(3月)

European Symposium on Computer Aided Process Engineering (ESCAPE: 5月~7月・欧州)

American Institute of Chemical Engineers (AIChE): annual meeting (10月~11月・米国)

International Symposium on Design, Operation, Control of Chemical Processes (PSE Asia:アジアで3年ごとの開催)

Process Systems Engineering (PSE:欧米で3年ごとの開催)

Life Cycle Management (LCM:欧州を中心に2年ごとの開催)